Q:外資系のリストラにおけるパッケージとは?
A:パッケージとは、退職勧奨に当たって会社側が提示する、割増退職金のことを指すという理解が一般的です(有給での在職期間、いわゆるガーデンリーブ期間の月給額や、有給買取額を併せた合計の金額を、パッケージ総額などということもあります)。
通常、「月給の●ヶ月分」といった形で示されます。
Q:パッケージ(割増退職金)の相場はどれくらい?
A:個々のケースによるのですが、比較的規模の大きい外資系の企業では、勤務歴が比較的短い方に対して2~4ヶ月、長い方に対して3~8ヶ月程度の低廉な数字をまずは示してくることが多いという印象であり、このあたりが外資系企業における最近のパッケージ交渉の一般的な開始水準と考えています。
Q:会社は、パッケージの提示額をどうやって決めている?
A:様々な考慮要素があります。重要なものとして、
①リストラ対象者の勤務年数(年数が長いほどパッケージが高額)、
②リストラ対象者の職位や貢献度(高いほど高額)、
③リストラ対象者の月給額(月給の●ヶ月分という計算方法を用いる場合、月給が高いほど退職金の絶対値が大きくなるため、会社は「●ヶ月」の部分を抑えようとすることがある)、
④会社側のヘッドカウント削減の必要性(例として、まとまった数の従業員を退職させたい時や年度末等で人員削減を急いでいるときほど高額、単発のリストラや年度初め等で削減を急いでいないときは低額)、
⑤会社側の業績やリストラ予算の高低(好業績、予算が潤沢な時ほど高額)、
⑥業界全体の動き(例として、リーマン危機の際には、リストラの常態化について従業員側にもやや諦めの雰囲気が広がったこと、会社側も予算に余裕が無くなってきたことなどから、退職勧奨の順序が後になるとパッケージ提示額が下がる傾向が一部で見られた)、
⑦会社の慣行(直近、●カ月分の提示で複数の従業員をリストラをすることが出来ていた等)、
があります。
Q:提示されたパッケージを、従業員はそのまま受諾しなければいけないのか?
A:全くそんなことはありません。パッケージとは、従業員を退職勧奨に合意させるための、会社側からの自主的な働きかけに過ぎません。したがって、従業員が提示されたパッケージを受け入れなければいけないということは有りません。
他方、会社の側にもパッケージの提示義務はありません。強硬な姿勢を取る会社の場合、パッケージを撤回し解雇の手続に移行するなどとして、退職勧奨への合意を強く迫るという手法を採ることもあります。
Q:提示されたパッケージの高低の判断、諾否の決断は、どのようにしたら良いのか?
A:金額の決め方は一律ではないため、金額の高低に正解というものはありません。金額の絶対値や、退職勧奨の対象となった理由に対する納得度、同業の知人等から伝え聞く最近のパッケージの相場、退職勧奨を受けるに至った事情、転職の可能性等に照らし、ご自身で満足のいく条件であれば早期に受諾をして次のキャリア構築を模索するのも一つの判断でしょう。
ただし、これまで積み上げてきた経歴と引き換えに手にする大切な金銭ですので、検討に慎重を期したい、また会社側の言い分に不合理な点が多いなどの場合には、事情に詳しい弁護士の法律相談を受けてから判断したとしても全く遅くはありません。
Q:弁護士を代理人として雇えば、パッケージは必ず増額されるのか?
A:パッケージ提示の有無及びその金額の高低は会社側が決める事柄であるため、従業員が弁護士を代理人として雇ったとしても、パッケージが必ず増額されるとは限りません。会社側も一定額のリストラ予算を設定して交渉に臨んでいるため、会社側が「相場」として認識している額から上乗せを行わせるのは、たやすいことではありません。
ただし、従業員本人が会社と交渉を続ける場合と決定的に違うのは以下の点にあります。すなわち、弁護士を代理人として雇った場合、会社側の一連の退職勧奨行為に落ち度があればこれを指摘し、法的な問題追求を行う結果として、退職勧奨の失敗の可能性や、退職勧奨の強要若しくは解雇を主張している場合の解雇無効といった法的リスクを会社に認識させることが出来ます。
会社側がこれらのリスクの存在を深刻な問題として捉えた場合、事態を穏便に収拾するため、会社からパッケージの増額やガーデンリーブ期間の延長を提案してくるという展開になることがあります。ここに、弁護士を交渉の代理人として用いることの最大の意義があるといえるでしょう。